梅原 猛の「アテネでわかったこと」

 選手たちは仏教でいう六波羅蜜、すなわち六つの徳のうち精進(しょうじん)、

忍辱(にんにく)、禅定(ぜんじょう)の徳を備えていることを感じざるを得なかった。

彼らは異口同音に金メダルを獲るために精進、努力したと語った。この場合、

努力という言葉はどちらかといえば肉体的意味が強いのに対し、精進というの

は精神的意味が強い。彼らが栄冠を得るために自己の欲望を抑え全力を尽くし

たことは間違いない。

 そして忍辱。彼らの多くは負けたときの悔しさやスランプになったときの辛さ

を涙ながらに語り、今回の勝利を喜んだ。栄光の裏には幾多の挫折があったで

あろう。その挫折のときに彼らは、彼らを批判的にみる人々の白い眼を感じた

にちがいない。しかし彼らはよく忍辱の徳をもち、そのような挫折を発憤の材

料とし、栄光をつかんだ。

 そして禅定。禅定とは結局、深く考えて、いざというときには無心となって事

に集中することをいうのであろう。勝負に勝つためには相手をよく研究する必

要があるとともに、いざ勝負になると、無心になってエネルギを一点に集中さ

せなければならない。今回のアテネ・オリンピックにおいても、ムードに溺

れ、深く相手を考えることをしなかったために勝利を逃したチームや、何らか

の身体的、精神的原因によって集中力を欠き、当然の勝利をつかめなかった選

手もあろう。

(梅原猛 中日新聞「思うままに」より抜粋)

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