日本は国土の7割以上を山が占めており、
人は古代から、山には神仏や祖霊が存在すると考え、
畏(おそ)れを抱いて仰ぎ見てきました。
その世界に入るのは、
聖なるものに触れるという宗教意識に根差しています。
そこに深くかかわるのが神仏混交の修験道です。
古来の山岳信仰に神道や
外来の仏教、道教、陰陽道などが習合して成立した民族宗教なのです。
山中に分け入り、心身を鍛錬し、聖なる力、超自然的な力を得る者が山伏で、
修験者とも呼ばれています。
理屈でなく、体を通して感覚を得る、極めて実践的な宗教です。
物質文明が高度に発達すると、
人間は楽を求め、自分の体を使わなくなります。
歩いて行けるのに自動車を使い、掃除機が掃除をし、洗濯機が洗濯をする。
本来、体の主(あるじ)だった魂が体に隷属してしまう社会になってきています。
だからこそ、修験道の実践性は現代社会にとって有意義だと思います。
金峯山修験本宗宗務総長 田中利典
リレー講座「現代社会と宗教」(立命館大学主催・読売新聞大阪本社後援)