天台宗独特の苦行である千日回峰行を2回経験された大阿闍梨の酒井雄哉氏が去る11月8日(火)に特別展覧会「最澄と天台の国宝」が開かれている京都国立博物館の中庭で講演をされました。
酒井氏は、1926年、大阪に生まれ、ラーメン店経営、証券会社の代理店経営など職を転々とした後、1965年に比叡山で得度されました。1980年と1987年の2回、9日間不眠で断食を続けたりする7年がかりの荒行「千日回峰行」を達成されました。
比叡山に残る記録では、千日回峰を満行した行者は47人、その中で2回の満行はわずか3人だといいます。
95年にはバチカン市国でローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見されました。
今回の講演会では、「行」の厳しさと、その中から見えてきた事、悟った事を展覧会と絡めて、語りかけてくれました。
現代人が忘れかけている「何か」を発見できた気がします。
〈千日回峰とは〉
天台宗独特の不動明王と一体となるための厳しい修行。行者は、蓮の葉を象った桧笠をいただき、白装束に草鞋ばき、死出紐と宝剣を腰に、もし行半ばで挫折すれば自ら生命を絶つ掟のもとに、1年目から3年目は比叡山中255箇所を巡拝する行程約40キロを休まず各百日間、4年目と5年目はそれぞれ連続200日、計700日の回峰をする。700日終了の後9日間不眠・不臥・断食・断水で不動明王と一体になる「堂入り」の行を満じる。6年目は京都市内赤山禅院往復が加わる一日約60キロの行程を百日、7年目は前半100日を僧坊を出て京都市内寺社を巡拝往復する一日84キロの「京都大廻り」、後半100日を山中約30キロを行歩する。7年間で合計1,000日を回峰し「満行」とする厳しい修行である。1,000日で歩く距離は約4万キロ、地球を一周するに等しい距離になる。
※堂入り:千日回峰行を目指す行者は700日の回峰を満じた後、不動堂に籠もり9日間、不眠・不臥・断食・断水で十万遍の不動真言を唱え、不動明王と一体になる行を満じる。生きたまま出堂できるかわからぬため、親族、一山の僧と別れの儀式をして籠もる「生き葬式」と言われる大変過酷な行。