何もしなければ
道に迷わないけれど
何もしなければ
石になってしまう
誰にも相談せずに事を運んだ
巣から飛ぼうとする時
落ちるかもしれないという思いは常にあった
だからといって他人の翼で飛べるわけでもなし
それに落下のさまを目撃されて
衝撃を与えるようなことはしたくなかった
巣の中で冷たくなっている雛を見ることも悲しいだろうが
落下していく様子を目で追っていく悲しみは
どんな身内でも耐えられないだろうと思っていた
自立とは不動のイメージがある
しかしぼくは、自立とは動であると思っている
常に自己の内部で核分裂を繰り返している期間が
自立期間であると思っている
作詞家 阿久 悠