そもそも位牌ってなに?いったいどんな種類があるの?いつ、誰が用意するの?宗派によって違うの?
このような疑問を解消します。
位牌とは故人の戒名や没年月日を記した木板。
自宅に仏壇がある方にとっては身近なものですね。しかし最近は仏壇がない家も増えています。位牌といえばほら、身内が亡くなった時につくる黒と金のアレ、漢字がいっぱい書いてあるやつ・・・なんてぼんやりしたイメージの方もいるかもしれませんね。
とはいえ位牌をつくる時には、ある程度の知識を得ておく必要があります。
なぜなら位牌の価格が販売するお店や業者によって天と地ほどの差があるからです。
正しい知識を持って注文しないと割高な買い物をしてしまって後々悔しい思いをする・・・なんてこともあります。
そこで本記事では創業明治39年の仏壇・仏具専門店が、これから位牌をつくりたいと考えている方に向けて、位牌に関する正しい知識と購入時のポイントを紹介いたします。
この記事を参考にして位牌を選んでいただければ、業者の言いなりになって高価な位牌を購入してしまうことはなくなります。
- 位牌に関する基礎知識をご紹介
- 位牌の注文方法や注文時に気をつけるべきポイントを紹介
位牌とは「故人そのもの」
位牌は別名「霊牌(れいはい)」とも言い、「死者の霊がとどまるところ」という意味があります。かつて死者の霊を慰める儀式をするときに、神霊をよりつかせる「依代(よりしろ)」を作っていました。これが位牌の起源とされています。現代では故人の霊をまつり、位牌に戒名や法名、没年月日、俗名、享年(行年)を記入し、仏壇や寺院の位牌壇に安置します。位牌の台座部分には蓮座がついており、その上に位牌板が立っています。お釈迦様や阿弥陀様も蓮座の上にいらっしゃいますね。つまり位牌は仏像(仏様の姿)を模したものです。
このように、位牌とは故人の霊が宿るもの=故人そのものと捉えられているのです。お位牌に生前のお姿を重ねると、より気持ちをこめたお祈りができますよ。
また、故人ひとりに位牌ひとつでなければならないということはありません。四十九日など、法要で使用する位牌はひとつですが、お祀りする家庭ごとにつくることもできます。反対に、ひとつの位牌に複数人の戒名を入れることもできます。ピンとこないかもしれませんが、位牌は、私たちがお祈りするときに故人の精神があの世から降りてきてくださる場所だと捉えるとわかりやすいでしょう。
また、最近はペットのお位牌を作る方も増えてきています。人であってもなくても、かけがえのない時間をともにすごした大切な家族。位牌は、亡き家族への思いをかたちとして残すひとつの手段でもあります。
位牌は故人の精神が宿るもの
お位牌はお祀りする家庭ごとにつくることができる
ひとつの位牌に複数人の戒名を入れることができる
位牌をつくるタイミングって?
葬儀の時におまつりする白木の位牌「内位牌(うちいはい)」
一般に私たちが位牌と言っているのは、「本位牌」と呼ばれる亡くなった人のためにつくるもの。死者が出たら、まずは「内位牌」という白木の位牌をつくります。
内位牌は葬儀の野辺送りに用いる仮のもので、葬儀社で用意してもらうことがほとんどです。菩提寺の住職に戒名を記入してもらい、葬儀式場の祭壇に安置します。(菩提寺のない人は、葬儀を仕切る僧侶の方に戒名の記入をお願いすることになります。)
葬儀が済んだあとは、内位牌は遺骨、遺影とともに家の後飾り檀(中陰檀)に安置します。四十九日法要のときに菩提寺に納め、お焚き上げしてもらいます。
仏教では、四十九日が済むまでは、故人の霊があの世とこの世のはざまを彷徨いながら、来世の行き先が決まるのを待っているとされます。四十九日法要で故人をあの世にお送りするまでは、位牌も仮のものを用いるということです。
四十九日までに用意しよう!「本位牌」
本位牌は、故人の来世が決まり、極楽浄土へ成仏した証として、内位牌から置き換えられるものです。
黒塗、朱塗、金箔塗などの、いわゆる私たちのイメージする「位牌」ですね。内位牌は葬儀社が用意してくれますが、本位牌は仏壇店などで自分で選び、購入する必要があります(まれにお寺で用意してくれることもあります)。
四十九日法要の時に菩提寺の住職に魂入れをしていただくことにより、商品であった位牌が、魂のこもった真の位牌となるのです。それゆえ、この魂入れは開眼供養とも呼ばれます。(仏像をつくるとき、最後に眼を描き込む(点睛)ことにより、単なる物としての像が仏像と成り、尊い魂が入って完成する。これを位牌に当てはめてそう呼ばれます) 本位牌は、家庭の仏壇や寺院の位牌壇に長く安置されますが、三十三回忌か五十回忌を終えると墓や寺におさめることとなります。
まず用意するのは葬儀用の白木の内位牌(主に葬儀社が用意)
四十九日法要までに本位牌を用意する(仏具店で購入)
位牌の色・かたち・大きさ
宗派によって違いがありそうで、どれを選んだらいいかよくわからない・・・という方は多いと思います。かく言う私も、この仕事に就くまでは、位牌なんて宗派ごとにルールとかあってめんどくさそう・・・って思ってました。
でもそれは誤解です!位牌の色やかたちに決まりはないんです!! 仏壇のデザインに合わせて決めてもよし、既にある位牌に合わせて選ぶもよし、故人の好きそうなデザインを選ぶのもよし、お好みのものを選んでOKです。
ひとつの仏壇の中に違うデザインの位牌がある(唐木位牌と塗り位牌が並ぶ)のも構いません。ただ、前述のとおり位牌とは故人そのものであり、長くおまつりするものですから、選ぶときは慎重に、またお祈りするときのことも考えて選びましょう。
また、位牌の大きさは先祖・先代のお位牌の高さを超えないものを選ぶのが一般的です。はじめて位牌をつくる場合は、お祀りする仏壇の大きさに合わせるのが良いでしょう。
広く一般に使用されるのは「塗り位牌」です。ほかにも「唐木位牌」「蒔絵位牌」などがあり、塗り位牌とはまた違った趣があります。春日形、猫丸形、葵形など伝統的なかたちもありますが、そうした形こだわらない、新しいデザインの位牌も登場していますよ。「回出位牌(くりだしいはい)」は、何枚かの位牌板がおさめられるようになっている位牌で、仏壇が小さいときや故人が多いときに使用します。いくつか代表的なものを見てみましょう。
- 位牌の色やかたちに宗派ごとの決まりはない
- 先祖・先代のお位牌の高さを超えず、仏壇に合った大きさを選ぶ
もっともシンプルで人気の高い「塗り位牌」
位牌の定番といえば「塗り位牌」です。定番ゆえに、お値段の幅も広いですね。写真で見ると同じように見えるのに何が違うのでしょう?ヒントは塗りのランクと装飾の細かさにあります。ここでは塗りの種類をご紹介します。
呂色塗り(ろいろぬり)
呂色塗りは、漆を「塗っては磨き」「塗っては磨き」を幾度となく繰り返し塗面を平滑・堅牢にしツヤ上げで鏡面の様な仕上がりになります。塗りと磨きだけで約20工程を経て作り上げる、塗り位牌の最高峰です。光を浴びたとき、歪みのない、潤いすら感じる反射を見ることができます。
上塗り(じょうぬり)
上塗りは呂花塗りとも呼ばれ、吟味され充分養生した素材で木地加工・ サメがけ・ 木がため・ 下地・ 下地研磨2回・ 下塗・ 下塗研磨2回・ 中塗・中塗研磨・上塗・加飾の大きく分けた12工程を経て完成します。 つや消しタイプもありますので、光沢のないマットな質感がお好みの方におすすめです。つや消しタイプは、光沢のある位牌に比べ、傷がつきにくいというメリットもあります。
普通塗り(ふつうぬり)
研磨をせずに仕上げるため、呂色塗りや上塗りのような光沢はありません。かかる手間が少ないゆえに、安価で購入することができます。
伝統的なかたちを受け継ぎつつ、現代型の仏壇にも合う「蒔絵位牌」
蒔絵位牌とは、塗り位牌のひとつで、漆の塗面に美しい模様が蒔かれたお位牌です。比較的最近広まったお位牌で、現代型のお仏壇にもよく合います。蒔絵の絵柄によって印象がガラリと変わるので、その人のイメージに当てはめて選ぶということもできます。
希少な木材を使用。木目にぬくもりを感じる「唐木位牌」
唐木位牌とは高級銘木の無垢材から作られる、素材の木目を活かしたお位牌です。 木材には黒檀や紫檀が使われます。これらの木材は極めて硬く丈夫で、耐久性に優れているのが特徴です。塗位牌のような金の装飾はなく、落ち着いた印象を与えてくれます。 黒檀や紫檀は日本三大銘木とされる高級銘木であり、古くから大切に珍重されてきました。 無垢材とは木材を貼り合わせる事なく、原木から切り出したものの事。継ぎ目のない木本来の暖かみや重厚さを感じることが出来ます。実際に手に持ってみると、位牌の大きさからは想像できない重量に驚くほどです。
これらの銘木はとても成長が遅いことでも有名です。木材として使用できる大きさに成長するまでには、軽く100年単位の歳月を必要とします。そのため、過剰な伐採を抑制するために現在はワシントン条約など国際的に保護されています。 現在、我々が位牌の製作に使用している木材は保護前に仕入れたものですが、今後新しく伐採した木材を手に入れることは不可能かもしれないとまで言われています。
黒檀
黒檀(カキノキ科カキノキ属)は極めて硬く、綿密で、水に沈むほど重い木材です。耐久性にとても優れており、虫や菌にも侵されにくい性質を持っています。黒檀は磨き上げることで滑らかで光沢のある表面に仕上がります。古くからピアノの黒鍵やギターの指板、チェスの駒の材料としても用いられてきた木材なので、故人の趣味や職業にあわせてお選びいただくと喜ばれるかもしれません。
紫檀
紫檀(マメ科ツルサイカチ属のローズウッド)は、古来から日本では高級木材として利用されており、黒檀、鉄刀木とともに日本三大銘木の1つです。家具、仏壇、楽器、建材など多くの製品の材料に使われてきました。とても硬く、綿密な木材のため加工が難しいのですが、磨き上げられた赤褐色のその姿はとても美しく、耐久性に優れています。
お祈りをもっと身近にする「モダン位牌」
時代とともに、祈りのかたちも様々になってきました。長期の入院、施設での生活や単身赴任先、長期旅行中など、昔ながらの仏壇・仏具では向かない場面も多いですね。ほかにもお部屋のインテリアを損ないたくない等、いろいろな思いに応える仏壇・仏具が生まれています。 ここでは、当店で扱っているモダン位牌を一例としてご紹介したいと思います。
マインドアルテ
当店で高級かつシンプルな携帯位牌としてご注文いただいております。 自由な形でお祈りできるマインドアルテ。 ご家族様の長期旅行先でも、毎日の礼拝が出来ます。
複数の位牌をまとめるための「回出位牌(くりだしいはい)」
回出位牌(くりだしいはい)は複数のお位牌をまとめるための位牌です。本体の中に数枚の札板が入っており、そちらに戒名等を記します。位牌が増えてきてまとめたい時や、小さい仏壇にお祀りするには最適でしょう。 通常の位牌と同じように、回出位牌にも塗り位牌と唐木位牌があり、かたちも様々です。
位牌の印象を左右する台座
位牌をインターネットで探してみると、「春日」「勝美」などの名前をよく見かけますね。これは位牌の台座部分のかたちの名前です。昔からある伝統的な台座はすでにデザインが完成されており、種類も限られています。塗り位牌の春日、唐木位牌の春日など同じ商品名をたくさん見かけるのはそのためです。では、それぞれどのような台座なのか代表的なものをご紹介します。
春日(かすが)
「春日」は春日神社から由来しています。日本古来のデザインの基本である直線を基調としていて、すっきりとした印象のお位牌です。あえて蓮座をデフォルメしてありますので、神徒のお位牌としても、幅広く利用いただけます。
蓮華付春日(れんげつきかすが)
蓮華付春日では、春日でデフォルメされていた蓮座が表現されています。春日のシンプルな特徴を活かしながらも、本格派の位牌になっています。
勝美(かつみ)
「勝美」は、春日位牌を基本としたシンプルなデザインの脚部、中央の上花・返花にほどこされた「研ぎ出し技法」の色漆塗りが特徴のお位牌です。
葵角切(あおいすみきり)
「葵角切」は台座や脚部分の角を落とした柔らかで優しい形が特徴です。伝統型のお位牌の中でも特にシャープな印象をあたえる形で、とても人気の高いお位牌です。
上京型千倉(じょうきょうがたちくら)
その名の通り、京都で生まれたデザインです。大きく彫刻された蓮座と細身な姿が特徴で、特に中部・関西地方で古くから愛されています。塗り、装飾のバリエーションも多く、おまつりする場所やご予算に合わせて選びやすいのも特徴のひとつ。
上京型千倉 吹蓮華(じょうきょうがたちくら ふきれんげ)
上京型千倉とほぼ同じデザインの位牌ですが、存在感のある台座が特徴です。蓮座の花びらが独立した形状になっており、その一枚一枚に金粉装飾が施されています。完成された上京型千倉のフォルムを受け継ぎつつ、より豪華で、より美しい姿をしています。
猫丸(ねこまる)
猫丸型位牌は、猫の脚をかたどった華麗さに、重厚さを合わせ持たせた安定感のある台座が特徴です。伝統と荘厳が映える上品な姿でお仏壇を彩ります。札板部分の幅が広いため、連名のお位牌にも最適です。
京中台(きょうちゅうだい)
京中台は主に関西地方でおまつりされているお位牌です。装飾の少ない台座はどんなお仏壇にもよく似合います。「上京中台」は「上塗り」と「京中台」を合わせた呼び名です。
高欄(こうらん)
高欄とはお寺の回廊や廊下などに取り付けられた仕切り板のことです。この仕切りは結界の役割を果たすとされ、お仏壇の中にも取り付けられていることが多くあります。このお位牌も台座部分に高欄が装飾されているため、そこから「高欄」と名づけられました。 「切高欄」は高欄の装飾をより豪華にしたもので、位牌本体で飾る場合や金仏壇にお祀りするのにおすすめの位牌です。数ある位牌の中でも最も装飾の細かい種類でもあります。
二重呂門(にじゅうろもん)
二重呂門はシンプルな造形が特徴のお位牌です。昔からある伝統的なデザインでありながら、その直線的かつシンプルな形ゆえに現代型の仏壇にも非常によくなじみます。
お位牌の装飾いろいろ
面金・面粉
金装飾の部分に金箔を使うのが面金装飾、金粉を使うのが面粉装飾です。面金装飾は金箔を貼り付けるかたちで行います。そのため金の光沢が比較的はっきりしており、また使用する金の量が少ないです。面粉装飾は、金粉を漆にふりかけ、なじませながら仕上げていきます。均質かつマットな質感が特徴で、面金装飾よりも使用する金の量が多いです。
吹蓮華
位牌の蓮座部分がより精緻に表現されています。吹蓮華とそうでないものを比べると一目瞭然ですが、吹蓮華では蓮座の花びらが一枚一枚作り込まれており、こまやかな職人技が見て取れます。
位牌の文字入れ
位牌には、戒名や法名、没年月日、俗名、享年(行年)を記します。そして、必ずしも一人にひとつの位牌というわけではなく、複数人でひとつの位牌をつくることができます。字体や記入方法にもバリエーションがあり、位牌の表情も様々です。また、文字入れに関しては宗派ごとに多少の違いがありますので、それぞれの場合を見てみましょう。
お一人の戒名を入れる場合
位牌の表には、中央に戒名を記入し、裏には俗名と享年(行年)を記入します。没年月日は表面でも裏面でも構いません。また、戒名の上部に宗派によって異なる梵字を入れることがあります。これらの梵字は各宗派の御本尊を表しています。
お二人の戒名を入れる場合
お一人の場合とほぼ同じですが、裏面の配置を左右入れ替えることができます。特に決まりはありませんので、お寺や地域、好みに合わせてお選びください。先に亡くなった一名の戒名を入れておいて、半面は空欄にしておくことも可能です。二人程度は通常のお位牌で記入可能ですが、人数が増える場合は位牌板部分が幅広になっているものを選ぶとよいでしょう。 ※注意※ お二人の戒名を入れる場合は、夫婦や兄弟のように二人が同じ代になるようにしましょう。親子などで代がまたがってしまうと、子孫の方々が混乱してしまいます。
先祖代々の文字、水子供養の文字を入れる場合
多くの場合は、下図のように中央に「○○家先祖代々之霊位」「水子之霊位」と入れます。○○家の部分はあってもなくても構いません。「水子之諸霊位」としても問題ありません。
戒名がない場合
戒名をお持ちでない場合も位牌はお作りいただけます。表面に「○○○○之霊位」というように俗名を記します。その場合、裏面の俗名は省略し、没年月日と享年(行年)のみとします。
「彫り」か「書き」か?「白」か「金」か?位牌の文字いろいろ
文字ひとつで位牌の表情はかなり変わるものです。位牌のかたち同様、宗派を問わず選ぶことができますよ。まず、文字を記入する方法は彫るか書くか、この2パターンになります。文字色は金・白・朱があり、広く一般には金が使用されます。(朱色は生前にお位牌をつくる場合に使用します。)書体は様々ありますが、当店では彫り2種類、書き2種類をご用意していますので、一例としてご覧ください。
いかがですか?こうして並べてみると違いが際立つと思います。続いて、文字色の違いも見てみましょう。
金文字は荘厳な印象ですし、白文字は清廉潔白、または清楚なイメージですね。文字を朱色で入れる場合がありますが、これは生前に位牌をつくる場合に使用します。
おわりに
いかがでしたでしょうか。こうして見ると宗派ごとのルールはほとんどなく、かなり自由に選べることがお分かりいただけたと思います。大切なお位牌選びの参考になれば幸いです。