怒りと腹

  Date: 2004-10-22 (Fri)

怒ることを、腹がたつとか立腹するという。反対に、怒りがしずまることを、腹がいえるとか腹の虫がおさまるという。外国語でも、同じような表現があるようだが、なぜ、怒りを腹に関係づけるのであろうか。言葉のあやといって片付けられそうもない。

実際に、空腹のときや腹具合のわるいときには、気がむしゃくしゃして怒りっぽくなる。腹痛でもあると、気分はちっともすぐれない。アメリカのある心理学者が、子供が一番怒りの反応をおこしやすい時刻を調べてみた。すると、午前十一時半と午後五時であるという結果がでた。空腹の時刻に相当するのであって、怒りと腹との関係はますます緊密でありそうである。(中略)

大脳辺縁系の活動の水準は、原始感覚、すなわち内臓からでるインプルスによって大きく左右されている。従って、空腹や痛みのあるときには、健康なときとは違って、異常なインプルスが上行して、大脳辺縁系の活動を、異常に高ぶらせていると考えられよう。すると、平生ならなんでもないことが、気むずかしくさせたり、怒りっぽくさせるのである。それとは反対に、ここちよい満腹の状態は天下泰平である。

 世知辛い現代に生活する私たちの情動は、とかく高ぶりやすい。私たちは、いろいろな手段で心のうさを晴しているが、内臓をすこやかにすることが、情動の高ぶりをしずめる大切な条件であることを忘れてはならない。すこしオーバーな表現であるが、家庭の平和、社会の秩序、世界の安寧は、まず腹の調子を整えることから、と言えないこともなさそうである。

「脳の話」時利利彦著

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