

- 数珠の選び方にルールってあるの?
- 宗派によって形が違うって聞いたけどホント?
このような疑問にお答えします。
数珠といっても、いろんな素材や形・色があり、お値段も安いものから高いものまで本当にたくさんあります。いざ買おうと思っても迷ってしまう、どれを選んだらいいのかわからない・・・という方も多いのではないでしょうか?
実は数珠は使い方によって選ぶべき形や色が異なります。ここを考えずに購入してしまうと失敗してしまうことも・・・。
そこでこの記事では、創業明治39年の仏壇・仏具専門店が数珠の用途によってどんな数珠を選べばよいか詳しく解説させていただきます。
- 数珠の種類がわかる
- あなたに最適な数珠の選び方がわかる
正しい数珠の選び方

そもそも数珠って何?
お葬式などの法事に欠かせない数珠。片手に掛けている人もあれば、両手を数珠の内側に入れて拝む人もあれば、両手でもみながら一心に念仏を唱える人もあります。
つまり仏前で拝むときに手にかけて使うもの、というのが一般的な認識かと思います。まさにその通りです。仏前で拝むときは誰もが持っていなければならない法具が数珠です。
実は、本来の数珠の使い道は「自分が唱えた念仏や題目の回数を数える」というものです。念仏を一回唱えたら、主玉を一つたぐるというように数えます。なので厳密には、単に手に掛けていればよいものではなく、両手で揉むようなことも数珠を傷めてしまいますので好ましくありません。
とはいえ、本来の使い道を知ると「数珠」という名前にも納得しますよね。数珠には珠数、念珠など他の表記がありますが、同じものを指します。それぞれ、「数える(ための)珠」「珠で数える」「念じる(のに使う)珠」といったところでしょうか。(この記事では、数珠という表記で統一します。)
数珠の選び方にルールはあるの?
基本的に数珠を選ぶにあたって厳格なルールは存在しません。自分が大切にできる1本をお持ちいただければ良いのですが、地域やご家庭によっては慣習が存在することもあります。
また、特定の宗派では数珠を重要なものとしてとらえており、本式数珠を使うのが望ましいと言われることもあります。
数珠の種類は?
数珠は、大きく2つに分けることができます。
ひとつは、宗派に応じた形の「本式数珠(宗派念珠)」。もうひとつは、宗派問わずにお使いいただける「略式数珠」です。
あらかじめこれを知っていただくことで、数珠選びが少し楽になりますよ。
数珠に使われる素材とは?
数珠と言えば、水晶・真珠・菩提樹といったあたりが真っ先に思い浮かぶでしょうか。
数珠の材料についてはいくつかの経文に列記されているそうです。それらをまとめると、世間から尊重される素材であって、清浄無垢のものであればすべて数珠の材料になります。
事実、現代ではアクアマリンやムーンストーン、寄木細工など実に様々な素材を使った数珠が作られています。
ちなみに、いずれの経文も菩提樹の実を最上の素材として記しており、金剛樹の実や水晶、真珠なども功徳多いものとされています。
房の形の違いや房の素材は?
房の形はいくつか種類がありますが、大きく分けると4種類になります。
切房、頭付房、梵天房、紐房です。どの房を選ぶかは決まりはありませんが、本式数珠ですと房の形が決まっているものもあります。略式数珠であればお好みの形をお選びいただくと良いでしょう。
また、数珠を探していると「正絹」「人絹」といった表記を目にするかと思います。これは房の素材を表しています。「正絹」は天然の絹(シルク)を指します。本絹と表記することもあります。
これに対して「人絹」は、人工的な絹ということで化学繊維(アクリルやポリエステルなど)を指します。
比較してみると、正絹の方がやはり繊維がしなやかで、さらさらとした手触りです。人絹はそれに比べるとやや硬さがあります。実店舗などで直接触れることができる場合は、ぜひ手に取って比べてみてください。
数珠の選び方を用途別に6つ紹介!
どんなシーンで使うのか?とりあえず用事に間に合わせるための1本なのか、一生使えるようなきちんとした1本なのか?などを考えることで、目的に応じた数珠の形が見えてきます。
店舗でお客様が数珠をお選びになる時にも、「どういった方が」「どのような目的で」使うのか気を付けて接客するよう心がけています。ここでは、まずは用途別に考えてみたいと思います。
その1:葬儀や法事に持っていく数珠

不幸はないに越したことはないですが、年齢が上がるにつれ、お葬式や法事に招かれることも増えていくかと思います。
「最近、そういう機会が多いな……」そのような場合におすすめなのは略式数珠です。本式数珠でももちろん構わないのですが、自分の宗派の本式数珠を持って他の宗派のお宅を訪問するのはためらわれる、という方はとても多いです。
また、女性の場合は、宗派を問わずお使いいただける二連数珠(振分)も選択肢に入ってきます。
より本式に近いかたち持っていただけますので、たとえば本水晶の白房でしたらどこに持って行っても恥ずかしくない万能選手と言えるでしょう。
最近は白房の中でも、銀糸がワンポイントにあしらわれているものはより高級感があり、見た目にも美しく人気があります。
その2:自宅や、身内の法要で使う数珠

ご自宅に仏壇があるなどして自宅で法要をとりおこなう機会が多い人や、そのご家族は宗派に合わせた本式数珠を持つのがおすすめです。
自分用の法事セットとして、数珠袋に入れた数珠と経本を用意しておくことで、慌てず法要にのぞむことができるでしょう。
三回忌、七回忌などの年忌法要だけでなく、毎年の棚経にお使いいただくことができます。
その3:お墓参りに持っていく数珠

お墓参りに持っていくことを考えるならば、本式か略式かは問いませんが、気軽に使えるような数珠が良いでしょう。
お墓の手入れなどをしているうちに置き忘れてしまって、気が付いて見に行ったら無くなっていた……というのは残念ながらあります。自分で選び抜いた数珠を急に失ってしまったら……悲しいですよね。
こんなお墓のエピソードに、え!?と思われる人も多いかもしれません。でも、筆者の身内で実際にあったことなのです(しかも複数回)。
まあこんな話は珍しいと思われても、フォーマルな場面で使うしっかりした1本とは別に、気軽に外に持ち出せる1本があると何かと便利ですよ。先ほどのように紛失してしまった場合や、知らない間に糸が切れてしまって使えなくなってしまった場合はどちらかが予備として機能します。
地方だと、うっかり忘れないように車に1本忍ばせておくこともありますね。あるいは、まだ数珠を持っていない子どもに、とりあえずの数珠として貸すということもあると思います。
人によっては抵抗があるかもしれませんが、サブとしての数珠、おすすめです。
その4:お遍路に持っていく数珠

お遍路の持ち物として持っていく数珠は、手持ちの数珠がある場合はそれで構いません。
もし、新しく求める場合にも制約はありませんが、真言宗の本式数珠がより適しているでしょう(お遍路の場合、他宗派でも真言宗の数珠を使って大丈夫です)。
というのも、お遍路のお参りは真言宗の作法が基本とされているからです。お遍路は弘法大師ゆかりの地を巡るもので、弘法大師は真言宗の開祖となります。
その5:贈り物としての数珠

数珠を送るタイミングというのはいくつかありますが、多くは成人祝い、就職祝い、結婚祝いなど、いずれも人生の門出のタイミングになります。
成人祝いや就職祝いでは、場面を選ばず使える万能な1本(つまり略式数珠ですね)を贈ります。
あくまで傾向としてですが、男性の場合は青虎目石やソーダライトといった青系や、オニキスやジェット、黒縞瑪瑙など黒系が人気です。女性の場合は本水晶や紅水晶に根強い人気のあるほか、ワンポイントで紫水晶やインド翡翠をあしらった品も人気です。
価格帯でいうと1万~2万円の品がよく選ばれていると思います。今の時代であれば、本人に好みの色を聞いてみたり、いっそ直接選んでもらうのも良いでしょう。
結婚祝いの場合は、嫁いでいく娘に、親からのプレゼントとして贈る場合が多いですね。
よく選ばれるのは本水晶に白房を合わせたものや白の淡水真珠に白房など、ホワイトを基調としたものです。二連でも良いですし、相手方の宗派があらかじめわかればその宗派の本式数珠を選んでも良いと思います。
選択肢が多いので価格帯も広いですが、ずっと長く使っていくものになりますので、珠の大きさや形状・房の仕立てを見て両家の前で使うにふさわしい、かつ本人にぴったりな一本を選びましょう。
ちなみに私は淡水真珠の略式数珠を母から受け取り、今も大事に使っています。
その6:子どもに持たせる数珠

年齢によって選ぶのが少し難しいですが、乳児~小学校低学年までは、お子さま用の数珠として販売されているものでおおよそ問題ないでしょう。
多くはプラスチックのビーズでできており、単色のものもあればカラフルなものもあります。
房の形は松房、梵天房、紐房など大人顔負けのバリエーション。
お子さま用の数珠の中でも当店で一番人気なのは「さくらんぼ房」の数珠です。さくらんぼのように並んだ2つの梵天房が愛らしく、5色から選べるので兄弟姉妹で持つことができますよ。
小学校高学年のころになると、お子さま用の数珠では小さくなってきますし、好みもはっきりしてきます。
大人と同じものの中から、予算と本人の好みに合ったものを揃えましょう。
だいたい1万円未満で探す方が多いですね。また、当店では数珠と数珠袋のセットをメンズ用・レディース用ともに用意しています。まずは形だけ揃えたい!という方におすすめのセットです。
こんな視点も!実用性で選ぶ数珠
携帯性で選ぶ
携帯のしやすさというと、重さや大きさがそれに当たります。たとえば、木の珠のほうが石の珠よりも軽い、というのは想像しやすいと思います。
また、男性用として仕立てられた数珠には大きな珠を使用したものもあります。天然石で大きな珠を使用している場合、すごく重厚感があり素敵なのですが、やはり重くなることが多いです(素材にもよりますが)。
ちなみに、使用されている珠が大きいのか小さいのかは、珠の数でだいたい判別することができますよ。「27玉」と書いてあるものよりも、「22玉」「18玉」と珠の数が少ないほうが、珠は大きくなります。
ただ、重そうだからと言って大きな珠の数珠を避けるのではなく、使用する人の手に合わせて、バランスよく選ぶのがコツです。大きく、ごつごつした手の人には大きな珠の数珠がよく合いますし、反対にに華奢(きゃしゃ)でしなやかで小さめの手の人には小ぶりの珠の数珠がよく合うでしょう。
保管のしやすさで選ぶ
房の形状や、珠の素材そのものの特性に注目するとよいでしょう。
房の形には、頭付房(房頭から糸が垂れている)、梵天房、紐房などいくつかの種類があります。頭付房のように糸が垂れているタイプは、使わない間に糸にクセがついてしまい、いざ使おうと取り出したら房が寝ぐせのように乱れていた……ということがあります。
時間があればクセを直すこともできますが、急な用事であったり、私のようにズボラだと難しいですよね。
梵天房であれば房が球体になっていますので、クセがついてしまうことはありません。また、紐房も乱れにくい形だと思います。
珠の素材は、最近の数珠は本当にいろいろな素材を使うようになっているので、気になる素材があれば素材名で検索して調べてみましょう。
衝撃に強いのか弱いのか(キズつきやすさ)、時間で変質することがあるか、熱や水にはどうか……など自分で気になるポイントを調べると、選んだ数珠への思いも深まりますよ。