仏壇には何をお供えしたらいいの?
仏壇へのお供え物にはどんな意味があるの?
このような疑問にお答えします。
何気なく見ていた実家や親戚の家のお仏壇。いざ自分でお供え物をしようと思うと「何をお供えすればいいんだろう?」「どうやってお供えすればいいんだろう?」「どのくらいの頻度で取り替えればいいんだろう?」などなど、様々な疑問に直面することと思います。
そこでこの記事では創業明治39年の仏壇・仏具専門店が、お仏壇へのお供え物について種類や方法、それぞれのお供え物の意味まで徹底的に解説いたします。
この記事を読んでいただければ、仏様にもご先祖様にも喜んでいただけるお供えの方法がご理解いただけます。
- 仏壇に何をお供えすればよいかわかる
- それぞれのお供え物の意味がわかる
なぜ仏壇にはお供えをするの?
お供えは供養の一つ
お供えとは仏様や死者に捧げるものの総称で、仏教では供養の一つとして捉えられています。元々は仏様や菩薩様などの相手に尊敬の念からお香・華・灯明を感謝の気持ちを込めて捧げることを意味していました。この3つは香華燈燭(こうげとうしょく)と言って、供養の基本となっています。
現在では元々の意味に加えて、故人の霊を慰めたりご先祖様への感謝の気持ちを表現したりするものとされています。
お供えをするのは仏教だけじゃない
仏教だけでなく神道やキリスト教でもお供えをすることがあります。ただし供えるものは宗教によって違い、例えばお酒は仏教ではお供えに向いていませんが神道ではお供えの代表として扱われています。
お供えの基本となる五供(ごくう)
香・花・灯明(とうみょう)・浄水・飲食(おんじき)の五つを五供と呼び、仏教における基本のお供え物となります。
この五つにはそれぞれに意味があり毎日のお供えに欠かせないものとなっています。
そんな五供について詳しくご紹介いたします。
香り
広くは「香り」をお供えすることを意味し、お寺では「香木」や「刻み香」などを仏様にお供えしますが、ご家庭では手軽なお線香をお供えするのが一般的です。そしてお線香をお供えするのは以下のような理由があります。
- お線香を焚くことで心身や場を清める。
- お部屋に広がる香りが仏様の慈悲の心を表す。
- お線香の香りが四十九日が過ぎるまで故人のお食事になる。
また「お線香」といってもたくさんの種類があって迷ってしまうかもしれません。お供えするお線香の香りや種類に決まりはありませんが、最低限下記の区別は付けておくと良いでしょう。
種類
お線香には杉線香と匂い線香の2種類がありますが、仏壇には匂い線香を使用します。
木紛と杉の葉の粉末を中心に作られた杉の香りがするお線香です。煙が多く出る特徴から室内には向かず、主にお墓参りで使われます。
匂い線香とはタブの木の樹皮の粉末をベースに、香木や漢薬などの香料を加えて作ったお線香で多くのご家庭や寺院で使われています。
種類が豊富なのが特徴で、定番の白檀系といわれる商品以外にお花やコーヒーの香りのするお線香なども出ています。選び方にルールはないので故人の好きだった香りや煙の量などお好きなものを選んでみましょう。
線香の匂いが苦手な方には煙が出ない電子線香もあります。
お線香の供え方
お線香の供え方は宗派にによって本数や置き方が異なります。厳密にこだわる必要はそれほどありませんが、知識として身につけておくとお葬式や法事のときにも役立ちます。
宗派 | お線香のあげ方 |
---|---|
天台宗・真言宗 | 3本を逆三角形の形になるように香炉に立てる |
浄土真宗 | 1本のお線香を香炉に合わせて折り、火が付いている方を左にして寝かせる |
浄土宗・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗 | 1本を真ん中に立てる |
お線香を立てる(入れる)香炉
香炉とは線香を焚く際に必要な専用の器で、中に香炉灰を入れて使います。
お花
仏教では仏花と呼び、仏壇やお墓に供えるお花を指します。
厳しい環境に身を置きながら花を咲かせる姿を修行への誓いになぞらえている。
故人を想う気持ちや極楽浄土の世界をお花で表すため。
種類
生花をお供えするのが理想ですが、維持するのが大変という方は造花やプリザーブドフラワーでもかまいません。ただし生花には『枯れていく姿が諸行無常を表してる』という考え方もあるので法事の日は生花を供えるのが良いでしょう。
生花
名前の通り生きたお花、自然のお花です。
- 生命力やみずみずしさがある
- 生花特有のいい香りがする
- 種類が豊富
- 季節によって咲く花が違うので四季を感じられる
- 管理などで費用がかかる
- 水やりや湿度管理など手間がかかる
- 生きているのでいつかは枯れる
- 花粉が仏壇に付いて汚れることがある
造花
紙や布など使って生花そっくりに作られたお花です。
- 費用が安く抑えられる。
- 水やりや湿度管理の必要がないのでお手入れが楽
- 枯らす心配がない
- 花粉がないので仏壇汚れの心配がない
- 生花特有の瑞々しさや香りはない
- 近くで見るとどうしても安物感が拭えない
- 直射日光など環境によって色褪せる
プリザーブドフラワー
生花を長期保存できるよう特殊加工したお花です。最近では仏花としても用いられるようになりました。
- 水やりの必要がないのでお手入れが楽
- 見た目が生花のようなクオリティ
- 花粉がないので仏壇汚れの心配がない
- 値段が高価
- 雨や湿気に弱く壊れやすい
- 直射日光などの環境によって色褪せる
- 生花特有の香りはない
常花
「枯れない花」「永遠に咲き続ける花」を意味する仏具の一種で、仏教界で最上の花とされる蓮の花をかたどった造花です。
- 丈夫でお手入れが楽。
- 見た目の神々しさから仏壇を華やかにしてくれる。
- 生花特有の生命力やみずみずしさはない。
- 浄土真宗など常花を使わない宗派がある。
お花の選び方
明確な決まりはありませんが、菊やカーネーションといった日持ちし傷みにくい花が好まれています。また故人が好きだったお花をお供えする方もいらっしゃいます。
しかし何でも良いわけではなく適していないお花があります。
- 香りの強い花 例(バラ)
- 毒のある花 例(チューリップ・彼岸花)
- 棘のある花 例(バラ・アザミ)
- ツルのある花 例(朝顔)
- 散りやすい・傷みやすい花 例(椿・サザンカ)
地域によっては習慣で控えている花もあります。
仏壇が汚れるといった理由で花粉の多い花も控える傾向にあるようです。
本数と色
本数は3・5・7の奇数が良いとされ、色は3本の場合は、白、黄、紫
5本以上の場合は、白、黄、紫、赤、ピンクを基本にします。
ただし四十九日までは原則として白いお花を飾ります。
参考サイト
飾り方
仏壇両脇の花立(はなたて)という仏具に左右対称に挿します。ですのでお花は2束で1セットが基本となります。お花の正面が拝む人に向くように供えます。
お手入れ
お花は毎朝替えるのが理想ですが、難しい場合は水だけでも替えてお花を枯らさないようにしましょう。
萎んだお花や枯れたお花は縁起が悪いので見つけたらそのままにせず、すぐに処分して新しいお花に差し替えましょう。
灯明
ろうそくの灯りを指します。
- ろうそくの火が拝む人の心の闇や煩悩を照らし出し心を引き締めてくれる。
- ろうそくの灯りがあの世とこの世をつなぐといわれ、お盆やお彼岸には故人の魂が無事に現世に着けるよう目印の役割をしてくれる。
種類
ろうそくには用途や原料によって様々な種類があります。
和ろうそく
原料に植物性油脂を使用しています。
代表的なものに、ミツロウ・米糠油・ハゼの木の実などがあります。
- 洋ろうそくに比べ油煙が少なくススがあまり出ないため仏壇を汚しにくい
- 炎が大きく消えにくい
- 原材料の確保など手間がかかっているので値段が高価
- 芯切りをしなくてはいけない
洋ろうそく
原料に石油系油脂(主にパラフィン)を使用しています。
- 機械製のため和ろうそくに比べて安価で買いやすい
- 芯が細く、じりじりと燃えるので燃焼時間が長い
- 煙が多く出るので仏壇が汚れやすい
- 炎が小さいため消えやすい
長い目で見れば和ろうそくがおすすめですが、毎日の供養を考えると洋ろうそくが使いやすいかと思います。
普段は洋ろうそくで月命日は和ろうそくを供えるといった使い方もおすすめです。
白ろうそく
白ろうそくは毎日のおつとめで使います。
他にも葬儀や年忌法要など法事によく使われています。
赤ろうそく
赤ろうそくは浄土真宗では新しい仏壇・仏像に魂を入れる際や、七回忌以降の年忌やお盆や彼岸で使われ、浄土真宗以外では三回忌からの年忌で使用する宗派もあるようです。
イカリ型のろうそく
一般的な棒型のろうそくに比べて曲線を描いてるろうそくです。
イカリ型は浄土真宗系、棒型は禅宗系で使われることが多いそうですが、決まりではないのでどちらを使用していただいてもかまいません。
電気ろうそく
火の扱いが不安な方や煙の匂いが苦手な方に人気です。
コンセント式と電池式の2種類あり、どちらも火の部分がLED電球になっているので火の消し忘れによる火災の心配がないのが一番の特徴です。
ろうそくを使う際の注意点
ろうそく立ての大きさや針の太さに合ったろうそくを使用しましょう。大きさや太さが合っていないと転倒する可能性が高くなります。
火災の原因を防ぐため、おつとめが終わったら消しましょう。
線香同様、息で吹き消さず手であおいで消すか、ろうそく消しや仏扇(ぶっせん)といった専用の道具で消しましょう。
浄水
仏前に供えるお水やお茶を指します。
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- 綺麗な水が穢れのない浄土を表しており、水を供えることで自分達の心も洗うという意味がある。
- 死者は喉が渇くという考えから故人やご先祖様の喉を潤すため。
お水とお茶、どちらを供えたらいいの?
お水とお茶どちらか片方でも両方供えても大丈夫です。
お水は水道水やペットボトルのお水でかまいません。お茶は一番茶が一般的です。
お供えする器
お水やお茶は茶湯器(ちゃとうき)という専用の器に入れてお供えします。
浄土真宗は後述の理由から使いません。
浄土真宗は供えない
浄土真宗はお水やお茶をお供えしません。理由は教えにあります。
浄土真宗では亡くなると同時に極楽浄土へいくといわれ、そこにある八功徳水(はっくどくすい)というありがたいお水のおかげで喉が渇くことがないので、わざわざお供えする必要は無いという考えなのです。
ただし食事に困らず生活できていることへの感謝として仏様に供えることがあります。
その場合、華瓶(けびょう)という仏具に水を入れ、古くから邪気を払う力があるとされている樒(しきみ)という葉を挿します。
樒を挿すことで八功徳水を表現し、お水ではなく香水(こうずい)としてお供えします。(樒は猛毒です。誤って食べないように!)
飲食(おんじき)
仏飯(ぶっぱん)やお仏供(おぶく)と呼ばれ、仏前に供える食べ物(主にご飯)を指します。
地域や宗派によって様々な名前で呼ばれています。
種類
一般的には私達が食べている主食(ご飯)が多いですが、時代の変化でパンやフレークをお供えするご家庭もあるようです。特別な日には季節の初物やいただきものや故人の好物などをお供えすることもあります。
仏飯にもお供えするのに適していないものがあります。
- 肉や魚介類といった殺生をイメージするもの
- ※臭いの強いもの
※代表的なもので五辛(ごしん)があります。
五辛とは修行の妨げになるという理由から仏教で食べることを禁じられていた辛みのある野菜で、 ネギ・ニラ・ラッキョウ・ニンニク・ノビルの5種を指します。
宗派で異なるご飯の盛り方
ご飯は仏飯器(ぶっぱんき)という専用の器にその日炊きたての一膳目をお供えします。
浄土真宗以外は盛り方に決まりはありませんが、浄土真宗は本願寺派(西)は蓮のつぼみのような円すい型、大谷派(東)は蓮の実のような円柱型に盛りつけます。
仏飯を下げるタイミング
ご飯から湯気がおさまったときが下げ時です。朝お供えした場合は正午前までに下げるのが良いでしょう。
夏場の暑い時期や日持ちしにくい食べ物は傷みやすいのでお参りをした後すぐに下げてしまっても大丈夫です。
お供えした仏飯は仏様からのお下がりとなるのでありがたくいただきましょう。
まとめ
以上、お供え物の基本である五供(ごく)についてご紹介をしました。これらの基本となるお供え物をしっかりと抑えた上で、もちろんこの他にお菓子や季節の果物などをお備えいただいても構いません。
最後に五供の意味や注意点など簡単にまとめさせていただきます。
種類 | 意味 | お供えの仕方 | 注意点 |
---|---|---|---|
お線香 | 香りが心身と空間を清めてくれる | 香炉に立てて(置いて)供える。 | 宗派によってあげ方が違う。息で吹き消さない。 |
仏花 | 故人を思う気持ちや極楽浄土の世界をお花で表した。 | 花立に左右対称に飾る。 | 飾るのに適さない種類がある。枯れたお花をそのままにしない。 |
ろうそく | 炎が心の闇や煩悩を照らし出し心を引き締める。 | ろうそく立てに合ったサイズを供える。 | おつとめが終わったらすぐに消す。線香同様息で吹き消さない。 |
水やお茶 | 綺麗な水をお供えすることで自分たちの心も洗う | 茶湯器という器に入れて供える。水とお茶どちらを供えてもかまわない。 | 浄土真宗は原則お供えしない。 |
ご飯 | 食べ物に困らず生活できていることへの感謝。 | 仏飯器という器に盛って供える。浄土真宗は盛り方に特徴がある。 | 暑い時期や日持ちしないものはお参りした後すぐに下げる。 |
ルールや種類がたくさんありますが、完璧じゃなくても故人やご先祖様への感謝や敬う気持ちがこもっていれば大丈夫です。
それぞれの意味を理解し無理のない範囲で故人やご先祖様にお供えをしましょう。