のどかな田園風景が広がる松阪市朝田町に朝田寺はあります。
最寄駅から歩くには距離があり、車でないと行きづらいお寺ですが、この地域でも有数の由緒ある古刹です。
朝田寺
地元の住民から「朝田の地蔵さん」と親しまれている朝田寺は、天台宗延暦寺派のお寺で、正式には光福山延命院朝田寺です。
本尊は国の重要文化財にも指定されている地蔵菩薩で、「朝田の地蔵さん」という呼び名はここからきています。
こちらのお寺は、延暦15年(796)、練公長者(ねりきみのちょうじゃ)の発願により空海によって創建されたとされ、本尊も空海の作だと言われています。
織田信長による伊勢平定の際にお寺は消失しましたが、元亀年間(1570~1573)に現在地に移転し、宗派も真言宗から曹洞宗に転宗しました。
その後、江戸時代の元和5年(1619)には紀州藩主徳川頼宣の帰依を受け、寺領も増えるなど栄え、慶安5年(1652)には本堂が新しく建立され、宗派も現在の天台宗延暦寺派となっています。
本堂や山門は三重県の文化財に指定されており、このほど書院も松阪市の有形文化財に指定されました。
曽我蕭白
曽我蕭白は江戸時代中期の画家です。
京都に生まれた蕭白ですが、伊勢地方にたくさん作品が多く残されており、この地域と縁の深い人物でもあります。
朝田寺には旅の途中2度訪れ、重要文化財に指定されている「唐獅子図」、市指定文化財となっている「唐人物図」や「雄鶏図」など11点もの作品を残しました。
毎年4/20~5/5に公開されていますので、足をお運びになってはいかがでしょうか。
道明供養
松阪市とその周辺では、宗派を問わず、葬儀の後に故人の衣類を朝田寺に持参し、地蔵盆(8/16~23)まで本堂の天井に掛け供養をする「掛衣」の風習があります。
こちらのお寺の本尊である地蔵菩薩は極楽浄土へ導いてくれる仏様です。
故人の冥福を祈り極楽への道を開くために行われるものなので、「道明供養」と呼ばれています。
地蔵盆の最終日には衣類を焚き上げ、供養の仕上げが行われます。
「わしが死んだら 朝田の地蔵に かけておくれよ 振袖を」と元禄時代に歌われているほど、昔から地域に根付いているのが道明供養です。
昔は他の地域でも行われていましたが、現在では松阪周辺に残っているだけとなっているそうです。
花の寺
朝田寺は別名を花の寺と言われるように、牡丹・紫陽花・蓮の花が折々に咲き誇っています。
特に牡丹は有名で、700坪の庭園に30種700株ほど植えられているそうですので、満開を迎えるころは圧巻でしょうね。
朝田寺は中学校の校区にあるお寺なので写生に伺ったことはありましたが、お花は見たことがありませんでした。
今はまだあまり咲いていないようですが、GWの頃はきっと見頃を迎えると思います。
10連休のお出掛けの予定に、朝田寺の牡丹鑑賞も加えていただけると嬉しいです。