崩れたレンガが剥き出しの壁と、おおきく傾いたパゴダ(仏塔)ばかりの 寂れた遺跡に、盗まれて 首のない無数の石仏を憂いながら、さ迷い歩く 僧侶にでも なった気持ちがした。
酷暑の中 容赦のない太陽が皆の首筋を赤く焦がしていた。
頭部を無くした石仏よりも、砕かれた仏体の破片よりも、レンガの強烈に美しい赤色が 廃虚を縁取り丘のように 山のように うねりながら、私たちを 不思議な感動で満たしていた。
長い年月の末、仏の頭部をまるで盗人から守るかのごとく、抱きかかえるように根付いてしまった。
すべて残らず 頭を無くしている石仏たちの表情は うかがい知ることが出来ない。
どれほどの栄華を誇ったのであろうか。崩れるに任せて沈黙を守るだけだ。
風化するもの、破壊されるもの、そこにあるのはただ空しさに似た静けさ。何も語らない。
仏教の教えを、やがて来る無に帰結する総てを、遺跡は身をもって示しているのか。
なぜか諦めに似た 爽やかな景色に、驚きと感動が押し寄せるのだ。