建武元年(1234)二条の河原に
「このごろ都ではやるもの」
として、落書きが掲げられました
夜討ちや強盗、と並んで
「茶香十炷(じゅちゅう)の寄合」があげられていました
この十炷香(じゅっちゅうこう)とは
最も基本的な組香で
平安時代の主流であった薫物ではなく
天然の香木を他の香料と配合せずにそのまま炷(た)くという
当時としてはとてもユニークな香による競技方法で
婆娑羅(ばさら)な人々によって楽しまれたといいます
組香( くみこう )とは、色々の香を打交えて一組となし、手に任せて焚きだし聞き当てる方法で、その方法に種々の変化と、趣味ある仕業を施して、勝敗を競う上に一段の興味を添えたものである。そしてその名称に就ては、或いは和漢の探り、或いは名詩歌のよるなどして、専ら風流を旨とし、意匠を凝ったのである。
ところで婆娑羅って聞きなれない言葉ですね
派手な衣装や行動で旧来の権威や概念を
超えようとする思想と行動のすべてをいうのだそうです
その時代の佐々木道誉(1306~1373)がその典型で
立花、茶、香などで
世間をあっと驚かせるスタイルを作りました
道誉は婆沙羅大名と呼ばれましたが
婆沙羅とは、もともとはサンスクリット語から出た言葉で
「乱暴」「無遠慮」「派手」という意味ですが
単なる野蛮な行為ではなく
計算された思考を持って
既成の不合理を壊す行為だったともいわれています
婆娑羅は、ただ新しいだけではなく、
いいものはいい、おもしろいものはおもしろいと
古い価値観に縛られずに
自分の価値観と美意識を具現化することを
よしとするスタイルだったんですね