伝統的価値観や工芸的価値観から
仏壇は造られることが多いと思います
全面天然杢張りで人が自然の木にに触れることのできる仏壇
総漆塗り純金箔仕上げで極楽浄土の荘厳さを感じることのできる仏壇
手軽に祈りをささげることを目的に省スペース化したコンパクト仏壇
でも考えてみるとそれは
私たち職人の視点からのハードなカテゴリー分類ですね
祈りをささげる側としての仏壇の意味を考える上で
目に見えないものに対する意識に価値を見出すこと
意識の向こう側にあるものを
「理屈を越えて」
心によって捉えることが重要ではないでしょうか
やすらぎを考慮した空間
心の遊び場としての空間
言うならば「心のおもちゃ箱」
に価値があると思うのです
現代において「祈り」とは
自我と社会との
空間的関連性 (横軸)が
時間的経緯(縦軸)を経て
積み重なったものであり
現在を生きる人間としての存在確認以上に
その過去の履歴を介してこそ
過去と未来に関わることができると考えます
個人においては このような履歴が
アイデンティティーを証明しているのです
空間は同時に「場」でもあります
「場」とは、行為や意識によって
意味・価値を与えられた空間をいいます
(例:遊びの場、憩いの場、学び の場など)
祈りの場とは
過去の履歴と場の概念から
理解されるものであり
社会と個人の相互関係という
日々の出来事の記憶を積み重ねることで
現在を生きる人間にとって
多様で複雑な「場」としての
意味と価値を持つに至った空間をいうのです
人は不完全な自分に対する認識のもとで
自分の「過去の履歴」を想い
静かに「祈りの場」 に身を置くとき
自然にわき上がるのは「感謝の念」です
心静かに手を合わせ、ものごとの全体を観ること
日々の活動の持つ「意味と価値」を再認識すること
積み重ねられた過去の履歴に目を向けること
存在の向こうにあって見えないものを観ること
そこから滲み出る「感性」は
「空間」としての配置と履歴を捉える能力ともいえます
大いなる宇宙と自らの存在の偶然性を心に刻み込み
その空間がどのような場として機能してきたかに想いを馳せながら
改めて空間と自らの関係性全体を捉えることが
いまとても大切なことだと思います