お香の原料は何?

生活の中で最も身近なお香は線香ではないでしょうか。

線香というと”お仏壇へお供えするもの”というイメージが強いかもしれませんが、最近では色や形、香りなど様々な種類があり、お供え物としてだけでなく、生活の中で香りを楽しむ機会も増えました。

お線香に使われる原料には化学的に合成された人工の香料もありますが、ここでは伝統的な香りの元となる天然の香材についてご説明したいと思います。

香木

沈香

ジンチョウゲ科の常緑高木です。

外的な傷が出来たとき、傷を治すために樹脂が集まり、その後胞子やバクテリアにより成分が変化し香りを放つようになったものです。集まった樹脂の作用で水に沈むことを沈水香木と言い、そこから沈香の名前が付きました。よく聞く“伽羅”は沈香の中で最上級の物に与えられる名前です。

白檀

白檀(サンダルウッド)

白檀

 

白檀は他の植物に半寄生し栄養分を吸収しつつ、自らも光合成する植物です。

英名がサンダルウッドといい、そちらの名前を聞かれた方も多いのではないでしょうか。種のみで増える植物で人工的な植林が難しいため、年々価格が上昇している香木でもあります。

以上がお香の中で香木と呼ばれるものです。

香料・漢薬

では次に、香料についてご説明します。香料はスパイスとしても使われており、私たちの生活に身近なものがたくさんあります。

香料には植物由来のものと、動物由来のものとがあります。まずは植物由来の香料からご紹介します。

桂皮

桂皮

桂皮(シナモン)

 

クスノキ科ニッケイ属の樹皮で、英名はシナモンです。

最も親しまれているスパイスの一つではないでしょうか。香料としてだけでなく薬としても使われており、正倉院に収められている『種々薬帳』という書物に記載されている、古くから使用されている香料でもあります。

丁子

丁字

丁字(グローブ)

 

フトモモ科チョウジノキの開花直前の蕾を収穫して乾燥させたものです。

英名ではクローブと言い、肉料理に使うスパイスとして、よく使って見える方もいらっしゃると思います。防腐剤・防虫剤のほか、染料としても利用されています。

大茴香

スターアニス

 

“だいういきょう”と読むシキミ科(モクレン科)トウシキミの果実で、英名でスターアニスと言い、星形の形から八角茴香とも呼ばれています。

中華料理のスパイスとしても有名ですが、漢方薬としても使用されています。爽やかな甘い香りが特徴です。

甘松

甘松(スパイクナード)

甘松

 

ヒマラヤや中国の山岳地帯にしか生えない高山植物で、オミナエシ科の多年草の根茎です。

平安時代には薫物の原料としての記録があり、沈香と相性の良い香料です。

木香

キク科の多年生草木モッコウの主根です。

一口に木香と言いますが、種類・産地・栽培方法で呼び名も香りにも違いがあります。

山奈

山奈

山奈(バンウコン)

 

ショウガ科バンウコンの根茎で、別名をバンウコン・カチュールスガンディと言います。

ショウガに似たすっきりとした香りで、他の香料の強い香りをぼかす補助的な役割の香料です。

鬱金

鬱金(ターメリック)

 

ショウガ科ウコン属鬱金の根茎で、秋ウコンと呼ばれています。

カレーに使用するターメリックがこの鬱金です。防虫・防カビ効果があり、染料としても多く使用されています。香りよりも色を利用することが多い香料ですが、現在では香の材料としてほとんど使用されていません。

藿香

シソ科カワミドリの葉と茎を乾燥させたもので、”かっこう”と読みます。

シソのような爽やかで甘い香りが特徴で、他の香料の香りを引き出す効果があり、香作りになくてはならない重要な香料です。

排草香

藿香と同じ植物ですが、土の上に出ているものが”藿香”、土の下の根っこの部分を”排走香”と区別します。。

藿香の甘い香りに加え、やや辛く熟した香りがします。

零陵香

零陵香(フェヌグリーク)

 

英名がフェヌグリークというサクラ草科の多年草で、甘く強い香りがします。

日本ではカレー粉の主原料であり、スパイスコーナーでも販売されている身近な香料です。

乳香

カンラン科ボスウェリア族の常緑高木の樹脂です。

木の幹に傷をつけ、しみ出したゴム状の分泌物が乳香です。フランキンセンスと言った方がわかりやすいと思われる方がいるのではないでしょうか。清涼で優雅な香りで、西洋で重用されている香りです。

龍脳

フタバガキ科の常緑の大木です。

樹心部の割れ目のような空間に出来ている結晶が龍脳ですが、採取できる数が少ないため、大変貴重な香料とされています。極上の龍脳を献上された玄宗皇帝が、楊貴妃にのみ分け与えたという話も伝わっています。

安息香

安息香

安息香

 

エゴノキ科エゴノキ属の常緑樹からとれる樹脂です。

名前の通りアロマテラピーではリラックスしたい時に用いられる香りで、漢方楽としても使用されています。

  

続いて、動物由来の物をご紹介します。

麝香

ジャコウジカのオスの生殖腺の分泌物で、ムスクと呼ばれるものです。

麝香そのものは独特の動物臭がしますが、アルコールなどの溶媒で薄めて他の香原料に調合すると、調合した香料を濃厚で熟した香りに変える不思議な原料です。

龍涎香

マッコウクジラの病的結石は正体ですが、どのような過程で結石ができ、香りを発するようになるのか未だに不明で、謎の多い香料です。  

貝香・甲香

アカニシ貝等、大きい巻き貝の蓋を粉末にしたものです。

タンパク質系の香りですが、他の香料と混ぜると、全体が引き締まった香りになります。

         

動物由来の香料は、お香の主材料というより、他の香料に少量を混ぜることによって全体の香りを維持したり引き立てたりする役割を担っています。

沈香・白檀のようにそれ自体の香りを楽しめる香木だけでなく、いろいろな香料の組み合わせで沢山の香りを生み出すことができるお香の世界はとても奥深いものです。

気分やシチュエーションに合わせて香りを楽しむのも、日常の癒しとしていいのではないでしょうか。

 

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